酒折 文武, 圓城寺 啓人, 竹森 悠渡, 西塚 真太郎, 保科 架風(2017).

統計数理, To appear.

 

【概要】

野球の投手における肘内側側副靭帯の損傷は近年増加しており, 大きな問題となっている. 予防の重要性にもかかわらず, そのリスク要因に関する科学的なコンセンサスが得られているとは言い難い. そこで本論文では, 肘内側側副靭帯損傷のリスク要因の候補を再検討した. そして, 先発投手とリリーフ投手とに層別してそれぞれロジスティック回帰モデルを立て, AIC を用いた変数選択により選択されたリスク要因について, 調整オッズ比を算出した. その結果, 先発投手については, 球種数が少ないこと, リリース位置が体から横に離れていること, 1 試合当たりの投球数が多いことがリスク要因であることがわかった. またリリーフ投手に関しては, 球種数が少ないこと, リリース位置が体から横に離れていること, ファストボー ルの球速が速いこと, 登板間隔が短いことがリスク要因であることがわかった. これらの結果は, 他の研究成果の一部を肯定しているとともに, 先発投手やリリーフ投手における 1 試合の投球数や登板間隔に関する重要な示唆を与えているといえる.