業績 - 論文

2017年3月

“野球のトラッキングデータに基づいた肘内側側副靭帯損傷の要因解析”

酒折 文武, 圓城寺 啓人, 竹森 悠渡, 西塚 真太郎, 保科 架風(2017).

統計数理, To appear.

 

【概要】

野球の投手における肘内側側副靭帯の損傷は近年増加しており, 大きな問題となっている. 予防の重要性にもかかわらず, そのリスク要因に関する科学的なコンセンサスが得られているとは言い難い. そこで本論文では, 肘内側側副靭帯損傷のリスク要因の候補を再検討した. そして, 先発投手とリリーフ投手とに層別してそれぞれロジスティック回帰モデルを立て, AIC を用いた変数選択により選択されたリスク要因について, 調整オッズ比を算出した. その結果, 先発投手については, 球種数が少ないこと, リリース位置が体から横に離れていること, 1 試合当たりの投球数が多いことがリスク要因であることがわかった. またリリーフ投手に関しては, 球種数が少ないこと, リリース位置が体から横に離れていること, ファストボー ルの球速が速いこと, 登板間隔が短いことがリスク要因であることがわかった. これらの結果は, 他の研究成果の一部を肯定しているとともに, 先発投手やリリーフ投手における 1 試合の投球数や登板間隔に関する重要な示唆を与えているといえる.

2015年11月

“Sparse regression modeling via the MAP Bayesian lasso. “

I. Hoshina(2015).

Bulletin of informatics and cybernetics Vol. 47, 37-58.

 

【概要】

Lasso をベイズモデルに拡張した Bayesian lasso には事後分布の解析解を導出することが困難であるという問題がある. これに対し本研究では, Bayeisan lasso の階層モデルが尺度混合正規分布の形状になっていることに着目し, そこからモンテカルロ積分によって Bayeian lasso の事後分布が混合正規分布の形状で近似可能であることを示し, さらにNewton法によって Bayesian lasso の MAP 推定を行う手法を提案した.

2015年6月

“Predictive model selection criteria for Bayesian lasso regression. “

S. Kawano, I. Hoshina, K. Shimamura and S. Konishi (2015).

Journal of the Japanese Society of Computational Statistics Vol. 28, 67-82.

 

【概要】

代表的なスパースモデリング手法である lasso をベイズモデルに拡張した Bayesian lasso において, 回帰係数ベクトルに関する推定の信頼性はベイズ信頼区間によって評価することが可能である. しかしながら, Bayesian lasso のベイズモデルは事後分布・予測分布の closed form を導出することが困難な形状になっており, 事後分布の推定に Gibbs sampler を使用する. このため, 解析的に陽な形で推定モデルの精度を評価することも困難である. これに対し本研究では, Bayesian lasso の事前分布をカルバック・ライブラー情報量の意味において最も近い正規分布で近似することで, Bayeisan lasso の近似予測分布を定め, それに基づく予測情報量基準 aPIC の導出を行うことで, Bayesian lasso による推定モデルの精度評価を行うことを可能にした.

2012年1月

“Bayesian lasso によるスパース回帰モデリング”

保科 架風(2012).

計算機統計学 Vol. 25, No. 2, 73-85 .

 

【概要】

回帰モデリングにおいて変数選択と回帰係数の推定を同時に行う(これをスパース性と呼ぶ)ことを可能とするスパースモデリング手法は, 高次元データから効率的に有益な情報を抽出する手法である. 一方, スパースモデリング手法とベイズモデリングとの関係性はよく知られており, 代表的なスパースモデリング手法である Lasso はガウス線形回帰モデルにおいて回帰係数にラプラス事前分布を設定したときのMAP推定量として解釈することが可能である. この関係から Lasso を完全にベイズモデリングの枠組みに拡張したものが Bayesian lasso である. しかし, Bayesian lasso による回帰係数の点推定値にはスパース性が欠落している. そこで本研究では, Bayesian lasso の点推定値にスパース性を付与する推定アルゴリズムを提案した.